チャールズ・ブコウスキー『パルプ』を読んだ感想
チャールズ・ブコウスキー(Charles Bukowski)の小説『パルプ』(Pulp)(柴田元幸 訳)を読んだ。
この本は、JR上野駅構内の書店のレジ前にある棚に並べられた本を見ている時に偶然見つけた。
本の帯に以下のようなことが書かれていたので、ほとんど帯を見ただけで、本を買ったと言っても過言ではない。
《本の帯に書かれていたこと ここから》
やっと手に入る!日本翻訳史上の最高傑作といわれた伝説の快作、解禁!
柴田元幸(訳)×東山彰良(解説)
"最高にサイテーな傑作。"熱狂的ファンの間で語り継がれてきた怪童作家の異色探偵小説が待望の文庫復刊!想像の斜め上をいくとんでもないオモシロさ。これはエンタメ小説の最高到達点だ!!
《本の帯に書かれていたこと ここまで》
読み終わった後の今としては、本の帯に書かれていることは、少し誇張されているように思うが、最初から最後まで退屈する暇がなく、常に面白いと感じていたので、良作なのは間違いないと思う。
通勤電車の行きかえりの中で、少しずつ読んでいったが、眠いはずの電車の中がこの小説を読んでいると眠くならなかったし、電車を待っている時間や電車に乗っている時間があっという間に感じられた。
この本が探偵小説かどうかだが、この本は探偵小説ではないと思う。
主人公は探偵業を仕事としているが、主人公の職業と小説のジャンルが必ずしも一致する必要はないであろう。
探偵小説が大好きな人は、探偵小説であることを期待して読まない方がよいと思う。
謎は綺麗には解けない。
「たぶん、こうなんだろう」という自分なりの解釈で物語を終わらせるしかない。
しかし、妙なことに、モヤモヤ感はない。
話の流れが奇想天外であったため、ラストもたぶん意味不明なのだろうと思っていたから、ある意味予想通りだったからだ。
主人公の探偵ニック・ビレーンは、私が読んできたこれまでの数少ない探偵小説の主人公の中では、もっとも魅力がなく、だらしなく、こんな人にはなりたくない、と思えるような人であるが、不思議と、この主人公の考え方に共感を抱いてしまうところもあった。
色々なことを真面目に考えすぎ、悩み、日々の生活が辛いと思っている人は、この小説を読むと、悩んでいたことが馬鹿らしく感じられるかもしれない。
主人公の行き当たりばったりの言動の根底にある変わらぬ考え方。
その考え方は、当初、厭世的なものと思っていたけれど、かなり違うもっと楽観的な考え方。
この主人公の考え方には、今後の私が生きていく上で、少し、影響を与えられたような気がした。
そういった意味で、この探偵小説は、謎解きという部分は置いておくとして、良作だと思った。