絵本『ねむるねこざかな』を読んだ感想


ねむるねこざかな

絵本『ねむるねこざかな』(作・絵 わたなべ ゆういち)は、猫と魚の関係が衝撃的な絵本だ。

絵本は、以下の文章で始まる。

ねこは さかなが すきでした。
さかなも ねこが すきでした。
そこで ねこは ときどき
さかなの なかに はいって
ねこざかなに なります。

「ねこは ときどき さかなの なかに はいって ねこざかなになります」というように、「ねこざかな」(猫魚)の定義が示されているが、これには驚いた。

絵本は絵だからいいのだけれど、もし、現実世界で、猫を丸のみする魚、魚を丸のみにする猫がいて、口の中から猫の顔、または、魚の顔が見えたら......怖すぎる。その様子を目のあたりにしたとしたら、私は怖くて気を失うかもしれない。

さて、1行目の「ねこは さかなが すき」という内容には全く違和感はないが、一般的に「猫は魚が好きである」という文章が表す意味とは違うことがすぐに分かる。

この絵本での「猫は魚が好き」という意味は、食べ物として好きなのではなくて、友達として好き、ということであった。

「猫は魚が好きである」という何の変哲もない文章にも、
・猫は食べ物として魚が好きである
・猫は友達として魚が好きである
という2通りの全く異なった解釈が可能であり、解釈は文脈によって変わる。

2016年現在では、人工知能で人間の書いた文章を正しく理解する技術が完成していないこと、自動翻訳による日本語への翻訳精度がこの20年間ほどの間に、あまり進歩しているようには見受けられないこと、といった考えが頭の中を過った。

絵本の1ページ目から、そのようなことを考えさせられるとは、すごいかもしれない。

この絵本ではその他に、猫と魚が力を合わせて「たこぼうず」を追い払うという話がある。
力を合わせて敵を倒すのは絵本の世界では定番なのかな、と思ったが、猫と魚が力を合わせなくても、猫1匹でもタコには勝てるのではないか、とも思った。
しかし、そういったことは過信であるし、油断禁物だから、この絵本で猫と魚が力を合わて戦うのは至極当然のことでもあると思った。

この絵本では、文章の解釈は文脈で決めないと誤って解釈してしまうということ、一人で勝てると思っても一人で戦うことは避けて複数名で力を合わせて戦う大切さ、という2点を学べるように思えた。

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