絵本『茂吉のねこ』を読んだ感想
『茂吉のねこ』(文・松谷みよ子、絵・辻 司)は、「あとがき」によると、秋田の民話がもとになっているようだ。
文章はおそらく秋田の方言と思われる言い回しがよく登場し、慣れていない子供が読むと、分かり難いところがあるかもしれない。
絵本の絵は、日本の昔話であることが想像できる雰囲気ぴったりの絵で、好感が持てた。
茂吉(もきち)という「てっぽううち」(鉄砲で獣を射る人。猟師)が主人公で、鉄砲を撃つ日以外は一日中お酒ばかり呑んでおり、そんな生活をしているから茂吉には嫁様の来てがないので、かわいらしい三毛猫を1匹もらってきて、そばにすえて、酒を呑んだり、話し相手にしている。
猫が物語に出てくると、私はいつも飼い猫のゆきおのことを思い出す。
我が家の飼い猫のゆきおは、一日の大半は寝ているので、きっと茂吉の飼い猫も、茂吉が話している間中、目を閉じて眠っているのではないか、という想像をする。
このような想像をしながら読み進めていくと、文章に書かれていないこと、絵としても描かれていないことについて想像が膨らんでいく。
ある日、茂吉の猫が化け物の集会で茂吉を殺すよう命令される。
猫が茂吉を好きだったので、茂吉を殺すことを拒否すると、猫は化け物に殺されそうになるのだが、茂吉に助けられる。
助けた後の茂吉の言葉とその後の茂吉の行動が、印象に残った。
「こら、おまえみた ちびっこねこが、いちにんまえに、
ばけものの なかまいり すんでね、この ばかたれ。」
茂吉は ねこを しかりとばして かたに のせ、
いえへ かえりました。
茂吉からは、猫に対する愛情が感じられた。
化け物に茂吉を殺すようにと命じられたが拒否した猫のことを、茂吉は今まで以上に大切な存在で、かわいいやつであると認識したに違いない。
「ちびっこねこ」という表現は、絵に描かれている猫を見ると、もう立派な大人猫に見えるが、茂吉にとっては猫はいつまでも「ちびっこ」なのだろう。
人間と猫との愛情、信頼関係はきっと存在する、ということを考えさせてくれる良い絵本だった。