絵本『ネコがすきな船長のおはなし』を読んだ感想
絵本『ネコがすきな船長のおはなし』(インガ・ムーア作・絵 たが きょうこ訳)(CAPTAIN CAT by Inga Moore)は、まず、表紙が印象的。
大きな船の甲板から、船長と思われるおじいさんと20匹を超える猫達が、小舟の上に立つ少女を見下ろしている。
このような素敵な光景が表紙に描かれていると、読まずにはいられない。
小舟の上の少女は話を読むとすぐに分かるが、ある島の女王様。
船長は、カルロッタ号という名前の船に、船員よりも多いくらいの猫を乗せていたため、「ネコ船長」と呼ばれている。
船長室のあまり大きくない部屋に、20匹以上の猫がゴロゴロしている絵を見ると、船長がとても羨ましくなった。
船長は、目が飛び出るほど値段の高い花瓶を、みすぼらしい猫と交換するほどの猫好き。
このような性格なのでお金はちっともたまらないが、猫との生活を楽しんでいる様子が、絵で強く伝わってくるので悲壮感などは全くない。
とある島にたどり着き、猫を使ってネズミ退治をした後、狭い船長室の生活に戻るよりは島でのんびりと過ごすことを選んだ猫達と涙の別れをする船長はかわいそうに思えたが、猫達の幸せを考えると、仕方のないこと。
1匹ぐらいは船長についていく猫がいてもよさそうに思えたけれど、猫とはそんなものかもしれない。
女王様が、宝石よりも大事なものは「かわいらしい生まれたての子猫」と考えていることには、私は強い共感を覚えた。
「生まれたての」という限定はしないが、私も、猫は宝石よりももっと大事なものであると思う。
もちろん、宝石をもらえることを期待していた商人たちにとっては、かわいらしい生まれたての子猫をもらっても、ちっとも嬉しいことはないのは分かる。
この絵本を読むと、何が一番大事なのかについては、人それぞれ違うんだなぁ、ということが改めてよく分かった。
猫のかわいさは宝石よりも価値がある、と考える人もいれば、宝石のほうが価値があると考える人もいる。
どちらの考えが正しいかどうかは、決めつけるべきものではないと思う。
価値観は人それぞれ違う、ということを学べる良い絵本だと思う。
また、この絵本で描かれている猫は、とてもかわいらしい。
かわいらしい猫の絵本を集めている人にとっては、この絵本は「買い」なのではないかと思う。