絵本『11ぴきのねこ』を読んだ感想


11ぴきのねこ

絵本『11ぴきのねこ』(著者:馬場のぼる)では、その名の通り、猫が11匹登場する。

絵本の表紙に描かれている猫を数えると10匹しかいないので「描き忘れかな?」と思っていたところ、背表紙にもう1匹いた。

背表紙の猫は他の猫達とは模様が違うので、絵本の中で登場する「とらねこたいしょう」だと思われる。

猫の見た目はあまりかわいくないが、文章で説明される猫の様子は、まさに猫そのもので、表現される猫としてはかわいらしい。

この絵本を読むことで以下のようなことを学ぶことができる。

・人間社会でも集団を統率するリーダーが必要だが、猫集団の統率にもリーダーが必要ということ。
 この物語では、リーダー自身を含めて合計11匹の野良猫を統率するには、「とらねこたいしょう」というリーダーが必要。リーダーの役割を学べるかも!?

・年配者の言葉を素直に聞いて行動すると良いことがあるかもしれないということ。
 年配者の言葉がいつも正しいとは限らないけれど、若者が知らない有益なことを知っていることがある。
 まずは、素直に聞いてみるという心が大切かと思った。

・皆が力を合わせれば、一人では倒せない巨大な敵も倒すことができるということ。
 現実世界で野良猫の集団が力を合わせている様子は見たことはないが、実際に力を合わせれば確かに脅威となるかもしれない。

・「巨大な」という曖昧な表現について、どれくらい巨大であるかを想像して現実感を持たせる楽しさ。
 この物語の場合、巨大な敵とは巨大な魚のこと。
 巨大な魚がどれほど巨大かによるけれど、大人の鯨ほどの大きさだと、猫11匹程度では到底かなわないと思う。
 では、どれぐらいの大きさであれば、現実感があるか。
 巨大な敵が人間であった場合のことを考えてみる。
 大人の私が11匹の野良猫に襲われることを想像すると、「ああ、かわいらしい、嬉しい!もっと襲ってきて!」という呑気な感想を抱く前に、恐怖のあまり逃げ出すと思う。
 と考えると、巨大な魚の定義は、人間の大人ぐらいのサイズの魚、と考えると現実感がある。
 
・リーダーも仲間も誰も信用できないこともある。特に、本能に直結していることは。
 捕った巨大な魚について、皆が「ぜったいに たべないこと!」という約束をしているにもかかわらず、皆が約束を破って魚を食べてしまう。
 欲望を抑えられる猫などいない。
 猫の目的は、おなか一杯食べること、おなかがいっぱいになったら寝ること。
 リーダーも同様で、信用ならない。
 人間社会であれば、疑心暗鬼にまみれた信用ならない集団ということになるが、「まあ、猫だから仕方ないよね?」という考えで終わってしまう。
 猫を人間に置き換えて読むと、痛烈な皮肉が込められているように思うが、絵本通りに、猫は猫として読んでいくと、そのような皮肉など感じられず、面白い絵本だと思う。

子供は、素直に、猫は猫として読むのだろうけれど、この絵本を読んでどんな感想を抱くかについては、是非、聞いてみたいものである。

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