寝息を立てる中年男にスリスリしながらゴロゴロと喉を鳴らす猫-ゆきお
土曜日の夜から日曜の朝にかけての深夜。
お風呂上がりにパジャマに着替えた私に妻は提案する。
「疲れているだろうから、マッサージをしてあげる。うつぶせになって」
3月から4月にかけて年度末対応などに追われて仕事で疲れ切っていた私は、妻からの有り難い提案に感謝してうつぶせになる。
妻に肩甲骨や腰のあたりを揉んでもらっていると、気持ちよくなりすぎたのか、いつの間にか眠ってしまったようである。
どれぐらい眠ったのかは分からない。
スマホを見ると、妻から写真がLINEに届いていた。
我が家の飼い猫ゆきおが私の背中の上に座っている写真が複数枚。
動画まで送られていた。
どうやら妻のマッサージが猫のマッサージに変わっていたようである。
猫にマッサージをしてもらえるなんて、猫好きにとってはたまらなく嬉しいことだ。
そんなことを考えていると、真剣な顔で妻がつぶやいた。
「これまでに飼ってきた猫もそうだったけど、猫が身代わりになって人の体の悪いところを代わりに引き取ってくれているのかもしれん」
妻から届いていた写真を見る。
私の背中から肩にかけて座る猫-ゆきお。
私の首筋に顔をうずめるようにしてくっついている猫-ゆきお。
私の腰からお尻にかけて座る猫-ゆきお。
私のお尻の割れ目に前脚を置いて妙なバランスを取る猫-ゆきお。
背中、肩、首、腰、尻・・・ゆきおが触れている私の部位。
私はこれらの部位が慢性的に痛い。
これまでにもあったのかもしれないけれど、眠っている私の背中の上にゆきおが座っている様子を見て、妻と同じ感想を抱いてしまった。
猫は飼い主の身体の調子の悪いところが分かるのかもしれない。
調子の悪いところを猫のフワフワな毛、プニプニした肉球、温かい体温で癒やしてくれていたのかもしれない。
猫を見たり触ったりすることで、精神的な癒やしが得られているのは昔から分かっていたけれど、身体面でも癒やしが得られていることについては気づいていなかった。
私の調子の悪い部位に飼い猫のゆきおがくっついてくるのは単なる偶然なのか。
それとも意図的なのか・・・飼い主を思いやってのことなのか。
ゆきおが本当に私の身体の調子の悪いところを引き取っているのだとしたら、私の身体的には良いことだとしても、私の精神的には良くないことである。
ゆきおの身体が悪くなるからだ。
ゆきおには長生きしてほしいから、私の体の悪いところなど引き取らないでほしい。
妻の勘はよく当たる。
しかし、これは外れてほしい。
私の体の悪いところは私自身で抱えるべきであり、猫に押しつけるのは良くない。
ああ、私のイビキについては、ゆきおに引き取ってほしいかもしれない。
動画を見る限りでは私が寝息(イビキ)を立てながら眠っていてうるさいはずなのに、我が家のかわいい飼い猫-ゆきおはゴロゴロと幸せそうに喉を鳴らしている。
我が家の飼い猫は中年男のイビキのうるささなど気にならないようである。
動画では、ゆきおが私の後頭部の髪の毛にスリスリと顔をうずめてくる様子が記録されている。
なんて、かわいい猫なのだろう。
ゆきおが私のことを気に入ってくれているようで嬉しい。
イビキをゆきおにあげると、ますますゆきおはかわいくなりそうだ。
猫のイビキは人間のイビキと比べるとかわいい音だろう。
かわいらしい猫のイビキなら同じ部屋の中にいる家族(妻と娘)からうるさがられるということもないであろう。
いびきをかくのは中年男の私ではなく、かわいらしい猫-ゆきおに任せたい!