写真集『消えゆく北京の街角 胡同物語』(著者:中村晋太郎)を読んだ感想
中国の北京市にある古い街並み「胡同(フートン)」を題材とした写真集。
筆者によると、胡同の始まりはおよそ七百年前の元の時代とされていて、皇帝の都として栄えた北京の文化を育み、受け継いでいく場となったのがこの細い路地裏とのこと。
2008年に開催された北京オリンピックに向けて、北京市が再開発され、胡同の一部が重機により取り壊され、高層マンションに変わっていくまでの過程も写真として収められている。
写真を見ていると、伝統が壊され、新しいものに置き換わるのは、簡単にできてしまい、あっという間に変わってしまうもので、後戻りすることはない、物悲しさを感じた。
胡同に住んでいる人達は共同便所(トイレ)を使っており、共同便所内の写真も掲載されていた。
便所内には仕切りがなく、つまり、他人が用を足しているのが丸見えである、というようなことも解説されており、実際の暮らしがよく分かった。
旧正月の方が盛大に祝われるとか、門には「福」と書いた文字を逆さまに貼って福が落ちてくるように縁起をかついでいる、といった話も良かった。
胡同については、胡同の成立から崩壊、取り壊しまで、一部の高級な胡同は保存対象となる細かな話まで、胡同にまつわる話を写真に添えられた文章や巻末の「胡同について」という解説で丁寧に書かれていて、大変興味深いと思った。
胡同を見に行きたくなるような、楽しく興味をそそられる写真集だった。