松本清張 『点と線』


九州博多近くの香椎(かしい)潟という海岸で男女の心中死体が発見される。だが、それを単なる心中事件として片付けることに疑問を持つ刑事がいた。ある人物がその2人の死に関わっている可能性が高い。だが、その人物は2人の死亡時刻に北海道にいたというアリバイがある。列車時刻表を駆使してその人物のアリバイを崩していく・・・という推理小説。小説の最後の注意書きを見ると、この列車の時刻表は昭和32年(=1957年)のものだということ。また、巻末の「解説」によると、小説が発表(雑誌で連載)されたのもその同年だということ。ということは、今(2002年)から45年も前の小説。どうりで、電報という最近の推理小説では全く見ない手法が取り入れられていたはずだ。(実は、最後を読むまで、時代設定がイマイチ分からなかった。)東京から博多までの列車が「特急」で、「新幹線」が登場しないことも新鮮だった。だが、それらを除くと、45年という年月を全く感じさせない「現代的」な刑事小説だった。また、アリバイの偽装工作方法についても、古めかしいものではなく、現代のと何ら遜色のないものであった。45年前の東京、九州、北海道が舞台だったが、この小説を読んでいる時は、現代(21世紀)の町並みが見えていた。読者が生きている時代に依存しない小説の力に感動している。

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村上春樹 『ねじまき鳥クロニクル 第3部 鳥刺し男編』

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[文]村上春樹・[絵]安西水丸 『ふわふわ』