村上春樹 『ねじまき鳥クロニクル 第3部 鳥刺し男編』

全ての謎が解かれたわけではないけれど、結末は満足の行くものだった。満州国での出来事が第3部にまでからんでくるとは思わなかった。「戦争の闇」の部分と主人公岡田亨や綿谷ノボルの「心の闇」の部分が微妙に重なるところや、井戸で自己の境界線を消し去る様子などは非常に印象的で、実は私は夢に見てしまった。夢の中で、一瞬、主人公と同じようにどこかの回廊を歩いていたりして、ひどく不安になった。こんな夢を見させるほどこの小説の訴える力は強い。また、私の現在(2002年2月現在)の状況が、仕事もしないで本を読んだり、たまにビールを飲んだりしているだけという主人公の状況と似ているからかもしれない。さらに、物理的な面では、主人公の家の横に路地があるように、私の家の横にも雑草が伸び放題の舗装されていない路地がある。私の家の横の路地は主人公の家の横の路地のように「閉じられて」はおらず、たまに好奇心旺盛な小学生達が(たぶん近道として)騒ぎながら通過していくが、大人は普通ここを通らない。さすがに、空家があるかどうか、井戸があるかどうかを探そうという気にはならなかったけど・・・。このように主人公の状況と私の状況が似ていることも、夢にまで見た原因かもしれない。さて、その他のことだが、赤坂ナツメグ・シナモン親子が最初思ったよりもいい人たちだったのでなんだか嬉しかった。あの親子は現実離れしていて、人間的温かみが感じられなかったがそうではなかった。特にナツメグがあんなに心配性な人だとは思わなかった。そして、「笠原メイの視点」に脱帽です。笠原メイの文章力・想像力・観察力・行動力に私は到底かなわない。「ねじまき鳥クロニクル」の中で一番好きな登場人物は笠原メイかな。ハードカバーの本で492ページありました。これで完結してしまったのが悲しい。もう続きがないなんて・・・。この本はかなりお勧めです。
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