写真集『沖ノ島』を読んだ感想
『沖ノ島』(著者:藤原新也)を読んだ。
写真がメインの本。
一般の人は立ち入ることが難しい謎に満ちた沖ノ島の様子を見開きのカラー写真で見ることができる。
沖ノ島についての説明文なども書かれているので沖ノ島のことをほとんど知らない人でも気軽に読むことができる。
御前浜での禊の写真。
「沖ノ島に上陸する者は裸になって海中で禊をする必要がある。」という筆者の説明文だけであればイメージがつきにくいと思うが、筆者は沖ノ島に上陸する時に必要な禊の様子を写真で紹介してくれている。
筆者が撮影した対象は、歴史作家の安部龍太郎氏。
安部龍太郎氏が禊をしている写真を見ることで、沖ノ島に上陸する前にどのような禊をする必要があるか、ということが具体的によく分かった。
写真は他にも多数ある。
沖津宮に向かう参道。
この参道は、急な階段状の道になっており、この道を毎日欠かさず歩いている沖ノ島常駐の神職の人は凄いと思った。
渡り石が苔で覆われている写真。
これは筆者の言う通り、人が立ち入っていないとこをよく示していると思う。
沖ノ島という人の上陸が厳しく制限された島にふさわしい道だと思った。
巨岩の写真。
「岩陰を島の女神、田心姫(たごりひめ)の女陰と見立てた」という筆者の文については筆者の想像でしかないのか、一般的な考えなのか分からなかったけれど、沖ノ島には巨岩が多いことはよく伝わった。
土器が散乱する地面の写真。
「祭祀で使われた土器の類いが無数に散乱している。今もって四世紀の土器が足元に転がっていることの奇跡と不思議を思わざるをえない。」という筆者の文の通りの写真が掲載されている。
通常であれば、埋蔵文化財センターや博物館で保管されたり展示されるであろう土器が、沖ノ島の地面の上には普通に転がっていることに驚いた。
人が簡単に立ち入ることができる場所であれば、踏まれて破壊されたり、持ち去られたりするだろうし、人が近くに住んでいるような場所だと、掃除のために撤去されたり、道路を造るために埋められたりするだろうから、このように数百年から数千年も前の昔の人が遺した物が地面にゴロゴロと転がっているのは素直に凄いと思う。
世界遺産への登録が決定した沖ノ島。
人々の関心が今後ますます沖ノ島に向かうことになる。
無断上陸などで沖ノ島が荒らされるのではないかと心配になる。
沖ノ島に上陸しなくても、このような写真集を見るだけで十分に楽しい。
この写真集は、沖ノ島がどんな島なのかを知ることができる入門書としてとても良いと思った。