ビジネス本『あ、「やりがい」とかいらないんで、とりあえず残業代ください。』を読んだ感想

ビジネス本『あ、「やりがい」とかいらないんで、とりあえず残業代ください。』(著者:日野 瑛太郎)を読んだ。

社会人という言葉の定義が、日本と海外で異なる話にはなるほどと思った。
日本の社会人という定義からは働いていない学生を除く、というのであれば、社会人ではなくて労働者でいいのではないかと、という意見はもっともだと思う。
従業員であるにも関わらず、経営者が従業員に経営者視点を求める発言をしてくるのは、経営者にとって都合がよいから、ということもとても納得ができる。

私の意見は少し違い、将来的に経営者になるつもりであれば、従業員の立場で経営者視点になって、しばらく修行をしてもいいと思う。
経営者になるつもりが全くなかったら、経営者視点で仕事を考えるメリットは全くないかというと、そんなことはないと思う。
いかに従業員が都合よく扱われるか、ということを予測し、身を守るために経営者視点とはどのようなものかを短期間であれば身をもって学んでおくのはいいと思う。

本から得られる知識も大事だが、身をもって(=命を削って、人生の貴重な時間を費やして)経験すると、本で言われていることが正しいのか、正しくないのか、と言ったことは自己判断できるであろう。

基本的には、著者の意見に賛同するが、どうしても賛同できないことがあった。
他の本にも登場するが、私はこの本にも登場する社畜(しゃちく)という言葉があまり好きではない。

流行り言葉を著者が使っているからと言って、それにいちいち目くじらを立てるのもどうかとは思いつつも、社畜という言葉の響きが汚らしく品がない。

本の巻末の著者紹介に、著者:日野瑛太郎氏の紹介文が掲載されていて、ややびっくりした。
著者の年齢が1985年生まれということ。
2017年現在、32歳ほどの年齢。若い。
若いから『あ、「やりがい」とかいらないんで、とりあえず残業代ください。』といういかにも若者が言いそうなセリフを本のタイトルとして思いついたのだろう。
タイトルはおそらく一部の人には反感を買いつつも読んでみたくなる秀逸なタイトルなので、私は良いと思う。

私の場合は

『あ、「やりがい」とかいらないんで、とりあえず残業代ください。』

ではなくて、

『あ、もう残業代いらないから、せめて「やりがい」ってものを感じさせてください』

という気持ちかな。
たぶん、このような気持ちを抱いてしまう私は、立派な社畜なのであろう。

私は残業代をもらっていて、贅沢をしなければ生活する分には特に困らない給料をもらっているが、始発電車に近い出社・ほぼ終電での退社を繰り返している状況にあるので、労働状況としてはあまり良い状況ではないであろう。

そんな良くない状況にいると、ちょっとしたことで私は怒りやすくなる。
会社内で非常に不愉快な発言などを聞くと(あるいは不愉快なメールを目にすると)、途端にやる気がなくなる上に、強い怒りを覚えてしまう。

著者のように会社を辞めればいいのでは、という気持ちにはよくなるが、なかなか行動には踏み切れていない。
会社で働くからには手を抜かず、全力で働くので次々と新たな仕事がきて、効率性を高めても対処できる量に限界があるから、労働時間を延長せざるをえない、という悪循環に陥っている、ことにも気づいている。
デススパイラル。
ブラックホールのように、一度落ちたら抜け出せない、ということは思いこみであろう、と思いたい。

著者は、東京大学工学部卒業、東京大学大学院工学系研究科修士課程修了、という凄い学歴の持ち主。
若くて才能がありそうな東大卒の学歴がある人が書いた本、で偏見を持っているのではなく、東大卒でも残業を避けられないのは何故なのか、ということが気になった。
社会の構造が悪いのか、運が悪いのか、あるいは本人が悪いのか、複合的に全部悪いのか。
そのあたりを著者が踏み込んで考察してくれると、さらに面白い本になったかもしれない。


あ、「やりがい」とかいらないんで、とりあえず残業代ください。

前へ

横になって赤いdynabookに手を乗せて大あくびする猫-ゆきお

次へ

Windows 10のhostsファイルの修正方法