石焼き芋の販売価格(愛媛県松山市内)
2階から降りてきた妻が、何の前触れもなく、突然、昔の話を始めた。
「私が小学生の頃、今から○十年前(※)になるかな。家の近くに石焼き芋の車がやってきたから、500円を握りしめて買いに行ったんよ。1本で良かったのに、石焼き芋のおじさんに2本買うことを勧められて、500円を使い切ったんよ。お釣りがもらえると思ったのに、全部使い切ったんよ。小学生の頃の500円は大金よ。それを全部使い切ったんよ」
※○十年前の記述:具体的にブログに書こうとすると、妻の苦情により削除することになった。
何故、そのような話を妻が突然話し始めたのか分からなかったが、間もなく、その理由が分かった。
「いぃしやーきぃいもぉ~、おいも。早く~、来ないとぉー、行っちゃうよ」
昔から何度か聞いたことがある石焼き芋を販売するおじさんのかけ声が聞こえてきた。
石焼き芋の販売をする車がどうやら近所に来ているらしい。
「石焼き芋が1本いくらか、聞いてきて」
妻が娘に命じると、娘は最初面倒くさそうにしながらも、嬉しそうに家を飛び出した。
娘に続いて私も行こうかな、と思って腰を上げると、妻から注意を受ける。
「もし、1本500円だったら高いからいらない」
「分かった」と返事をして、玄関に向かっていると、娘が帰ってきた。
「いくらだった?」という私の問いに娘が答える。
「重さによって変わるって。でも大体、1本500円って言ってた」
家族会議を経て、高いから買わないということになった。
「1本が500円ということは、昔、2本で500円だったのは安かったのかなあ。500円はでも高いなあ。買う人いるのかなあ」という妻の疑問に娘が答える。
「2本買っている人がいたよ」
2本で1000円と考えると、かなりの金額。
妻と私は、焼き芋の高さに驚きつつも、買う人がいるということを考えると、ひょっとして値段が高い分美味しいのだろうか、買うべきか、と思っているうちに、焼き芋屋さんの声は遠ざかり、聞こえなくなった。