写真集『軍艦アパート 山下豊』を見た感想
「軍艦アパート」というタイトルと写真集の表紙に惹かれて見てみた。
黒電話が写っていたので、私が小学の頃はまだ黒電話を実際に使っていた時代であったことを考え、昭和50年か60年代頃の写真かなぁ、と思ってみていると、「フラット型」(テレビが映るガラス面が曲面ではないタイプ)のブラウン管テレビ、プレイステーション(初代)、NECのデスクトップパソコン「VALUE STAR」など、平成以降の商品と思われるものが写っている場合があるので、どうやらもっと新しい時代であることが分かった。
写真に写っているカレンダーを見ると、いつくかの写真は、1991年、2002年に撮影したことが分かった。
写真集の著者のあとがき(「通いつづけて17年」)を見ると、この写真集は、平成18年(2006年)までの17年間にわたって撮影したものであることが分かった。
写真が撮影されたのは、昭和の時代ではなく、平成元年以降であることが分かった。
黒電話については、私の祖父母の家でも長らく黒電話を使っていたような記憶があるので、平成の時代に黒電話があっても不思議ではない。
1冊の写真集の中で、17年もの歳月が流れてはいるが、写真集を見る限りでは、歳月の流れを感じさせない、ある一定時期に時が固定されているような印象を受けた。
「軍艦アパート」の呼称については、著者のあとがきに説明があった。
《写真集の著者のあとがきより引用》
昭和6年から8年に入居開始となった大阪市営の鉄筋3階建ての当時としては超モダンな住宅群で、6畳と4畳と台所、風呂はないが、水洗トイレなどの最新設備が各世帯に備えられ、屋上から何本も突き出た煙突から出るかまどの煙が、遠くからも見えたそうだ。その姿はまるで軍艦の様だったというところから「軍艦アパート」とあだ名がついたらしい。そんな住宅は浪速っ子の羨望の的となった。
このような「軍艦アパート」の名前の由来を考えながら、写真集を見直すと、また感慨深いものがあった。
私が現在暮らしている自宅も、少し離れた場所にある実家も、思えば、長年、時が止まっているような印象がある。
たまに、家電を買い直したり、家具が増えたりすることがあるので、少しずつは変わりながらも、生活する人が変わっているわけではないので、基本的には大きくは変わらない。
自宅や実家を写真に撮ることがあるので、その写真をたとえば10年後に見たら、どんな気持ちになるのだろう、というようなことを思った。
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