丸田祥三『棄景II—HIDDEN MEMORIES』
廃墟の光景をテーマにした写真集。
東京都町田市で撮影したという「郵便ポスト・群」が良かった。
私が子供の頃(25年ぐらい前)にはよく見た円筒形の郵便ポストが、いつの間にか、四角形の郵便ポストに変わっていったことをよく覚えている。
この写真集では、その円筒形の郵便ポストが15個ほど立ち並んで廃棄されている様子は、少々異様な光景だ。
さらに異様さを増しているのが、よく見ると、きちんと「立って」並んでいる円筒形の郵便ポストの傍らで、四角形の郵便ポストが1個だけ、横倒しにされていることだ。
構造的に四角形の郵便ポストは横倒しで置いておかざるを得なかったのだろうけれど、当時、四角形の郵便ポストに取って代わられて廃棄される悲しい立場にある円筒形の郵便ポストの方が廃棄される最期まで立ち続ける様子は、立派である、という印象を抱いた。
この写真集も前作と同様にカラー写真ではなく、白黒写真だった。
ポストは赤い。赤いポストが朽ち果てつつある様子をカラー写真で見せてほしかった。
何故、白黒写真なのだろう……。