漫画『幼女戦記』第4巻から第6巻までを読んだ感想

漫画『幼女戦記』(原作:カルロ・ゼン、キャラクター原案:篠月しのぶ、漫画:東條チカ)の第4巻から第6巻までを読んだ。


幼女戦記(4) (角川コミックス・エース)

《第4巻の目次》
・第9話:始まりの大隊I
・第10話:始まりの大隊II

ゼートゥーア准将の「多少手荒でも再教育してやれ」という発言の意味。
ゼートゥーア准将によると、『軍隊で「多少手荒」とは死者を出さない程度にやってよいという意味』とのこと。
この言葉通り、主人公の11歳の少女ターニャ・デグレチャフ大尉は、過酷な訓練を実施する。
ついてこれない部下は全て見捨てるのかと思っていたら、ターニャが雪崩から部下を救うシーンがあり、おや、と思った。
自分の盾にするために部下を育てているようであるが、実はターニャ自身も気付いていないかもしれないけれど、意外と部下思いなのかもしれない。

今回も軍事用語の勉強になった。
「蛸壺」とは、『1mほどの穴。気休め程度の安全地帯となるが直撃を受ければ墓穴となる。』とのこと。

「皆様こんにちは 皆様は自分の感性が他人と合わないと感じたことはありませんか」という冒頭のターニャの言葉には、ギクリとさせられた。
この本を読んでいる皆様の一人である私。
もちろん、感じたことありますとも!
「合意できたと思ったら全く違う合意でした」というターニャの言葉にも頷きかけたが、さすがに、それはないかな。
ターニャの前世は、仕事のできるビジネスマンであったはずだが、前世でもこんなことが起きていたのだろうか。
今のターニャみたいな感じだったら、前世で有能なビジネスマンだったというのは少し疑問。

ターニャは、自分のことを危険視するレルゲン中佐のことを自分のことを心配してくれる善い人だと思ってしまう。
この勘違いが、巻を重ねるごとにひどくなっているのが面白い。

さらに、今巻では、もっとひどい勘違いがあった。
軍医の女性に「同年代と比較し身体の成長が遅れているのではないだろうか」と相談すると、軍医からは「大尉は孤児でしたから幼児期に取るべき栄養が十分ではなかったのでしょう」と言われ、ここまでは普通だったが、次に続いた言葉に私は唖然とした。

「同年代にくらべ性徴が遅いのは仕方がない事だわ」

ターニャは身長が伸びないことなどの成長について相談していたつもりが、軍医からは性徴の相談だと勘違いされたようであった。

勘違いは、お互い様なところはあるだろうけれど、ここまで真逆の勘違いをお互いにし続けるのは不思議だし、何だか少しターニャが憐れに思えてくる。
(この勘違いがこの漫画の面白い所ではあるけれど...。)


幼女戦記(5) (角川コミックス・エース)

《第5巻の目次》
・第12話:ダキア戦役I
・第13話:ダキア戦役II
・第14話:ノルデンI

203航空魔導大隊は、帝国に反旗を翻したダキアに攻め入るが、そこには航空部隊はなかった。
空を阻むものはなく、空を簡単に制圧したターニャの部隊は、空から地上の歩兵を攻撃することで簡単に勝利する。

第一次世界大戦を例に出し、航空部隊の有無で、航空部隊の兵力差で、勝敗が決まってしまう。
第一次世界大戦のことを歴史として知っているターニャにとっては当たり前のことでも、この世界の人達にはそれが分からないので、航空部隊を率いるターニャが圧倒的な勝利を収めることになる。
第5巻の終盤の話を見ていると、レガドニア協商連合には、ダキアの敗因は航空部隊の有無であることは見抜かれていたので、いつまでもターニャ達の帝国が圧倒的な勝利を収められるとは言い切れない。
今後のレガドニア協商連合との戦争がどのようになるのかがとても気になる。

ターニャとレルゲン中佐との勘違いなやり取りがさらにパワーアップしている。
ターニャが少女漫画のような顔になったり、ターニャが自分が前世でレルゲン中佐のような立場であったことから、レルゲン中佐に同情し、レルゲン中佐の言うことを聞いてあげる姿勢など、何だか面白い。

「わたしも前世でそういう立場だったではないか わたしはレルゲン中佐を線路に落とす様な人間ではない」
※ターニャは前世で、自分がリストラをした元社員に恨まれて線路から突き落とされて死んでいる。


幼女戦記(6) (角川コミックス・エース)

《第6巻の目次》
・第15話:ノルデンII
・第16話:ノルデンIII
・第17話:ノルデンIV
・第18話:ノルデンV

「やっと今世でもワインが飲めるかと思うと少し涙ぐみそうである」と思うターニャ。
涙ぐむ程度では済まず、大隊の隊員達に見つかるほどの涙を流す姿は面白い。
完璧な行動をとっているようでいて、実は抜けているところがある。
意思疎通が正常にできず、お互いに勘違いが続いている状況も、ターニャの「抜けている」ところが一因となっているかもしれない。

第6巻の途中で、第3巻の時のように、統一歴1967年(世界大戦からおよそ40年後)の話が登場する。
この話では、ターニャのことは名前すらも判明していない謎の存在のようになっている。
今後の話の伏線になるのかもしれないけれど、40年後の話は今のところ、あまり面白い話ではない。

この巻ではレルゲン中佐とターニャとの面白いやり取りがないので残念。

冬季にロシア遠征を行って失敗したナポレオンの話。
何十万という兵力を飢えと寒さで失った、とのこと。
その前世の歴史を知っていたターニャは、雪中戦の無謀さはよく分かっていた。
だから、上官達には、冬季攻勢ではなく、春季攻勢を進言したはずであったが、何故か、逆の受け止められ方をしてしまい、冬季攻勢を行うことになってしまった。
しかも、冬季攻勢の最先鋒はターニャの部隊。

第5巻では強敵かもしれないと私が思っていたレガドニア協商連合はあっけなく敗れてしまった。
このまま、ターニャが無敵のような存在で話が続くのか、もう少し骨のある敵が出て来ないのかが気になる。
第7巻が待ち遠しい。

《関連リンク》
漫画『幼女戦記』第1巻から第3巻までを読んだ感想


幼女戦記(1)<幼女戦記> (角川コミックス・エース)


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幼女戦記(3)<幼女戦記> (角川コミックス・エース)

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