漫画『魔王城でおやすみ』第1巻を読んだ感想


魔王城でおやすみ(1) (少年サンデーコミックス)

『魔王城でおやすみ』(著者:熊之股鍵次)の第1巻を読んだ。

第1夜(や)「眠れぬ城の姫」では、魔王城に囚われたスヤリス姫(本名:オーロラ・栖夜(すや)・リース・カイミーン)が「安眠できない」という理由で安眠枕を作るという大胆な行動に出る。
安眠枕の作り方は、こうだ。
熊のぬいぐるみのようなかわいらしい悪魔「でびあくま」の毛をよじって糸を作り、あかハーブ、きいろハーブ、あおハーブで染めた魔王城のカーテンを糸で縫って枕の形にし、その中に、でびあくまのふわふわの毛を入れる。
これで、姫特製安眠まくらの出来上がり。
うーん、こんな材料で作られた枕では私なら安眠できそうにないなぁ。

その後、姫が安眠を求めてとる行動が面白い。

おばけふろしきという素晴らしい生地の悪魔を倒し、ベッドのシーツにする。
後で分かることだが、倒したことで悪魔は死んでしまうらしい。
死んでしまった悪魔は、悪魔修道士によって生き返らせてもらっているらしいが、快眠のために悪魔を殺しまくる姫は、恐ろしいなぁ。

魔獣のイビキがうるさい、という理由で防音対策を探していたところ、うっかりマグマに落ちて死んでしまい、生き返らせてもらった時に入れられていた棺おけが気に入り、棺おけの中で(棺おけの蓋を閉じて音を遮断して)眠る。

毒キノコの胞子を布団にして死んでしまったのには呆れてしまった。
魔王も「もしかして バカなのか?」と言っているが、本当にそう思う。
そのバカさが可愛いから、オッケーだけど。
姫がナヨナヨしておらず、前向きで格好いい性格をしているので、私はこの姫のことは好きだが、もうちょっと自分の命を守ることに気を使った方がいいと思う。

死んでも悪魔修道士が姫をあっさりと生き返らせてしまうから、魔王城にいる限り、死の概念が全くないことも姫を大胆な行動に駆り立てているのかもしれない。
命が一回限りで、復活などできない、という設定であれば、姫はこんなバカなことはしないであろうとも思った。

悪魔修道士の話では、週に1回は死んでしまう事故が起きているらしい。
死にすぎだ!
しかも、それらの(たぶん)全てが安眠を求めての行動による事故死である。
安眠と永眠を一緒に考えていないだろうか。
そんなことは漫画には描かれていないけれど、そんなことまで考えてしまう。
人間の世界に戻ろうとしない姫が、心配だなぁ。

悪魔修道士や魔王に(快眠のための背中のツボを押してもらうために)「体を触って」と頼む話で、魔物達が女の子に弱いことがよく分かった。
姫はまったく卑猥な発想はないが、悪魔修道士や魔王は姫の言葉に驚きすぎて我を失ったり、舞い上がったり。
皆、姫に困ってはいるが、この様子を見ていると、姫を可愛らしい女の子と見ており、姫のことが好きなようにも見える。

禁断の魔道書の封印を姫は偶然とは言え解いたのに、魔王城から脱出せず、魔道書の力を使って安眠を求める。
元の人間の世界には戻りたくないのかな。
姫の様子を見ていると、人間の世界での生活が嫌になっていて、このまましばらく魔王城で暮らすのも悪くない、と思っているように思える。

第12夜(や)「枕の海とバベルの塔」では、気持ち悪い枕の失敗作が登場する。
・スライム枕 敗因:すぐ復活して動く
・風船ピラニアまるごと 敗因:なまぐさい
・魔あずき入り枕 敗因:わずかな水気で死ぬほど発芽

スライム枕と「風船ピラニアまるごと」枕は、どちらもとても気持ち悪い。
こんな枕をよく作ろうと思ったものだ。
姫、心が病んでないかなぁ。
この気持ち悪い異常な枕を見て、姫の心が壊れていないかが気になってしまった。

第13夜(や)「おいでよ神器の森」では、魔王最強の武器「アメノムラクモ」があり、魔王達はその武器を姫が入手したのは姫を助けようとしている勇者に渡すため、と考えた。
姫は、光り輝くその武器を日光の代わりとして寝室に設置した。
日光を浴びて体内時計をリセットしたい、という欲求を満たすためだった。
姫が囚われている魔王城は永遠の夜が続き、朝も昼もないので、日光の代わりが欲しかった姫。
魔王すら想定外のこの武器の使い方。

素直に、姫が人間の世界に戻ればいいだけのような気がするし、もう姫の実力であれば、それぐらいたやすいであろうに、姫はそれをしない。
それは何故だろうか。
それが最大の謎に感じる。

この漫画が永遠に続いてほしいなあ、と思えるほど面白いので、私としては、このまま姫には明るく楽しく魔王城で暮らしてもらいたいものだ。

第2巻が早く読みたいと思った。

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