写真集『幻花曼陀羅 夢枕獏』を見た感想

夢枕獏は小説家というイメージが強いので、『幻花曼陀羅(げんかまんだら)』という写真集があることを知って興味を持ってしまった。

約115ページほどの写真集は、色彩鮮やかな花、木、草木と共に生きる虫、鳥などの写真とそのそれぞれの写真に添えられた詩的な文章で構成される。

文章は、写真を直接的に説明するものではないが、中には写真と文章の組み合わせが愉快なものもある。

カマキリの連続する写真2枚に添えられたそれぞれの文章が

「そんなもので、この天地が動くものか———」

「そのあたりが仏法よ」

という会話的なものになっていることに気付いた時、カマキリ達がそのような会話を交わしていたとしたら、面白いだろうなあ、と思った。

また、あとがきの「光の宇宙論」が良かった。

《あとがき「光の宇宙論」より抜粋・ここから》

光というのは、物質というものが、時間とか、空間とかへ融解してゆく時に放たれる、一番純度の高い宇宙なのではないか。

〜〜〜(略)〜〜〜

物質の純度を高めてゆくと光になってゆくように、言葉もまた、その純度を高めてゆくと、光になってゆくのだと思う。

《あとがき「光の宇宙論」より抜粋・ここまで》

この抽象的な話は、非常に興味深く、心に残った。

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