写真集『東京Y字路 横尾忠則』を見た感想

東京都内のY字路を撮影したした写真集。

約235枚(ページ数で推測)ほどの写真が掲載されている。

人が写りこまないことを狙っているようなので、都市部のY字路は昼間以外の夕方〜夜にかけての写真が圧倒的に多い。

一方、郊外の写真は、昼までも人がいない時が多いからだと思うが、昼間の写真が多い。

本書のあとがきで著者が

「通りに人が歩いているのが現実である。しかし一瞬人が消える瞬間があるのだ。その瞬間こそ創造、いや死の瞬間か。」

と記述しているのを見て、写真だけでは分からなかった著者の思いが少し分かり、あとがきを読んでから改めて写真を見ると、写真への印象が少し変わった。

私もY字路、いや、Y字路に限らないと思うが、人通りの途絶えた道を一人で歩くことがある。その時の私の気持ちと著者の気持ちは、きっと違うのだろうが、私は、そんな道を歩く時は、少し心が落ち着く。

誰も寄り付かない死に絶えた道であれば、寂しい、悲しい、という気持ちになるかもしれないが、やがて日が昇れば、また明日になったら、再び人が行き交うことが分かっている道であれば、人がいないのはちっとも寂しいことではなく、人がいないのは人はどこかで休んでいるからだろうと予測できるし、自分もまた今から家か出張先のホテルでもうすぐ休めるのだ、という気持ちがある。だから、休む場所に移動するまでの間に、人通りの途絶えた道を通るのは、静かで気持ちが良くて心が落ち着く。特に、夜は。



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