手塚治虫 『ロストワールド』

本書には、「地底国の怪人」と「ロストワールド」が収録されている。「地底国の怪人」は、地球の中心を貫いて地球の反対側にまでトンネルを掘るという作業をしている時に、地底人に出会って、地底人と人類との間で起こる諍いの話。本編の内容はともかく、耳男君というウサギがどうして人間になりたかったのか気になった。また、人間からひどい扱いを受けていたのに、自己を犠牲にして人間に尽くすあたりも「何故だろうか?」と疑問に思った。いや、僕の心が卑しいだけだろうか?耳男君は、自分をウサギではなく人間だと思いこんでいたのだから、周りの人間たちに自分を認めてもらおうと思って必死だったのかな。自分の命を危険にさらしてまで、人間の役に立てば、きっと人間として見てもらえると思ったのかもしれない。この話は、地底人の話などより、耳男君の心情を追うことの方が大切だと思った。「ロストワールド」は、地球に大接近したママンゴ星をめぐる物語。ランプがもみじを食べたシーンは信じられない思いだった。いくらもみじは元々植物だったとしても、見た目は人間の女性そのものだし、知性も人間と同じだというのに、ランプはもみじを食べた。どうやって食べたかは、描写されていないが…どうやって食べたんだろう?大人の女性をどうやったら丸ごと食べることができるんだ?何にしても、いくら宇宙空間で漂流して狂気の状態に陥っていたとしても、こんなことをする人間は絶対に嫌だ。

前へ

原作:藤子・F・不二雄/シナリオ:宮崎まさる/作画:三谷幸広 『ザ・ドラえもんズ スペシャル2』

次へ

手塚治虫 『鉄腕アトム 3』